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MEXICAN HAT
これは「メキシカン・ハット・ロック」という岩で、ユタ州の最南部にあります。
メキシコの大きな帽子をかぶった旅人が丘の上から遠くを見ているような格好をしています。
これも予想していたよりはるかに巨大なものでした。

この岩の近くに、「メキシカン・ハット」というたいへん小さな町があります。
アーチーズやアイランド・イン・ザ・スカイを見るために4泊していたモアブの町を朝6時半に出発し、
メキシカン・ハットに着いたのは朝10時頃です。

ここのガソリンスタンドで給油し、朝ごはんや暖かいコーヒーを買いました。
アメリカでは、ガソリンスタンドにコンビニみたいなお店がが併設されていて、荒野の中のどんな小さな村のガソリンスタンドでも、
様々なものが買えます。
ガソリンは自分で車に給油して、コンビニのレジにお金を払いに行く仕組みです。

ここは、ナバホ族というネイティブの人たちが住む土地なので、コンビニの店員のおばさんも、
ガソリンを入れに来るドライバーの人たちも、みんなナバホの人たちでした。
見かけが僕たち日本人とすごく似ているので、ここはアメリカではなくナバホという別の国なのではないかという感覚に陥ります。
実際、ナバホ族の人々は自治を行い、アメリカの中で実質的な独立国のようになっているそうです。

メキシカン・ハット・ロックは、
町なかからも遠くに見えました。

果てしない荒野の風景に、
あの岩の姿は遠くからでも目立ちます。
岩の近くに行くには、
このような未舗装道路を走ってすぐ着きます。

モアブの町を出発してすぐ、
道沿いにチャーチ・ロックという大きな岩がありました。
メキシカン・ハットの町の近くに、「グースネック州立公園」というところがあり、じつはこちらの方がここへやってきた目的でした。

グースネック(ガチョウの首)というのは、川の蛇行によって対岸が半島状に突き出したところのことです。
クネクネ曲がって下る川のことを、日本語では「蛇行」、つまりヘビの姿にたとえますが、
アメリカ西部では、「グースネック(ガチョウの首)」とか「ホースシュー(馬のヒヅメ)」と呼び、
そういう地名がいたるところにあります。

グースネック州立公園の展望台からは、
このようにこちらに突き出す首が2つと
その間にはさまれた、向こうへ突き出す首が1つ、
合計3つのガチョウの首が並ぶ様子が
1ヶ所から眺められました。
僕達は去年、アリゾナ州のペイジという町の郊外でも、このようなものを見ました。
コロラド川が蛇行して自分の足元でグルッと、まるく曲がっていました。
それは「ホースシュー・ベンド」というところで、ここと比べると、
スケールの大きさではホースシュー・ベンドのほうが壮大な感じがします。

あのときは、何の予備知識もなしに、地元の人に教えられて行って、その眺めを目にしたので強烈なインパクトがあったのです。
周囲は、荒々しい真っ赤な大地が果てしなく続いていて、それが夕陽に染まり、信じられない風景でした。
そこで、僕はその風景に触発されて「アリゾナ・スカイ」という歌を作りました。
これは「星景歌集」というアルバムに入っています(コマーシャル)。

こちらのグースネックは、もっと優しく、すこしユーモラスな印象がありました。
いずれにしても、水が大地を削り、このような風景ができあがるのです。ほんとうに壮大な物語です。

グースネックは谷の眺めも素晴らしかったですが、
その周辺360度の風景、雰囲気も素晴らしいものでした。
とにかく広いのです。
ところで、ここでとても印象的な出会いがありました。
僕達はここに1時間以上いましたが、いつまでたっても誰も来ないので、
「こんなすごい所に、誰も来ないんだなー、確かに、西部には他に凄いものがいっぱいあるからなー。」などと思っていました。

するとそこへ、地平線の彼方から大きな白いキャンピングカーがやってきました。
キャンピングカーが展望台の駐車場に止まると、中から中学生くらいの女の子と、そのお父さんが出てきました。

女の子が、足が不自由だということはすぐに分かりました。
そのお父さんは、彼女をまず背負って展望台まで運び、いちばん眺めの良い岩に座らせ、上着をたくさん着せました。
そして走って車へ戻りカメラを持ってきて、景色や、彼女の写真をいっぱい撮りました。
お父さんは僕に「やあやあ!この景色はすごいな!」と声をかけてきたので、
僕は「ここから撮るとカッコイイ写真が撮れますよ!」などとこたえて、少しだけ話をしました。

写真を撮り終わると、お父さんはまた走って車に戻り、今度はビデオカメラを持ってきて、
忙しそうにいろんなものを撮影していました。
そして、「じゃあ!」と言うと、女の子をまた背負って車に戻り、地平線の彼方へ消えてゆきました。
お父さんはこの身を切るような冷たい風の中で、息を切らして、汗をかいていたように見えました。
そして本当に幸せそうな、素晴らしい笑顔で僕と話をしてくれました。

この父娘は、キャンピングカーを借り切って、大西部を旅しているのです。
きっとグランドキャニオンの展望台でも、モニュメントバレーでも、同じようにお父さんは彼女を背負って周っているに、
違いありません。僕は、西部を旅行していて、いろんなことを学びました。
本当に大切なものとは何であるのか、幸せというのはどういうことなのか考える機会が多くありました。
大自然は地球という星の素晴らしさを教えてくれたし、砂漠で懸命に生きる動物や植物たちとの出会いも感動的でした。
そして、この地で出会った人々の印象も、一生の財産になると思っています。

メキシカン・ハットから東に1時間半ほど走ると、
「フォー・コーナーズ(4州境界点)」があります。

サチコ嬢が立っているところが、
ユタ、コロラド、アリゾナ、ニューメキシコ
という4つの州の境界点なのです。
あの円の縁に沿って
「FOUR STATES HERE MEET
 IN FREEDOM UNDER GOD」
と書いてありました。
神のもとの自由において四州ここに集う、
という感じでしょうか。

円の中心にはこのプレートがはめ込まれています。
4つの州を手の平で一度に触れることができます。

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