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皆既日食 TOTAL SOLAR ECLIPSE

これは、僕が撮影した2009年7月22日の皆既日食の写真です。
ふつうの安いデジカメで撮ったので、手ブレもひどいし物凄い露出オーバーですが、
そんなことよりも自分で撮ったということが大事なのです(笑)。

真ん中の黒い丸は『月』です。月の向こう側に太陽がピッタリ重なって隠れています。
周囲には太陽の大気であるコロナの光が広がって、全体としては空に『黒い瞳』が浮かんでいるように見えます。
 

僕たちが日食を見たのは小笠原諸島の
北硫黄島の沖合いです。

前夜も空は厚い雲に覆われていたのですが、
真夜中に一人で甲板に行ったら、ものすごい満天の星空と天の川が見えました。

僕はそのとき、『やった! 明日はきっと晴れる! 皆既日食を見られるんだ!』と確信し、
ワクワクしながらベッドに戻りました。
後で聞いたら、参加者の多くの人たちがこの『前夜の満天の星空』を見ていました。
みんな天気が気になって、夜中にデッキに偵察に行ったのだそうです。
 

500人の参加者が、何か所かある甲板に分散して
観測の準備を始めます。

僕たちはこの最後尾の『スポーツ・デッキ』でした。
この写真の左奥の辺りに
サチコネエサンと一緒にマットを広げて陣取りました。

太陽が少しずつ欠け始め、
いよいよ日食のスタートです。

鏡のような、
真っ青な大海原がほんとうに印象的でした。
太陽は1時間以上かけてゆっくり欠けてゆくので、
その間は海に見とれてました。

雲が少しあったけれど、
船長さんが雲の下をよけて移動してくれたおかげで
完璧な皆既日食を見ることができました。

僕は、皆既日食を見るのは2回目でした。
1995年10月24日に東南アジアで見られた皆既日食を、タイのコラート高原で見たことがあります。

僕は、皆既日食というのは『神との遭遇』だと思っています。
この宇宙に、地球や月や太陽がほんとうに存在していて、
それらを動かす目に見えない大きな力が確かに存在するということを、理屈ではなく、一瞬の感覚で理解できます。

太陽が欠けてゆくとき、人間の目と脳はそれに順応してゆくので、90%くらい太陽が欠けても暗くなった感じがしません。
しかしここからが壮大なスペクタクルの始まりです。
太陽が90%以上欠けた頃から、急激に『世界が消えてゆく』ような感覚に襲われます。
『暗くなる』というよりも、周囲の全てのものが薄くなって消えてゆくような感覚です。
これはほんとうに、何度体験しても(2回だけど)鳥肌が立つような不思議な体験です。

同時に気温が急激に下がって、冷たい風が吹いてきます。
今回は海の上でしたが、陸上の場合は、異変を感じた鳥や動物たちが騒ぎ始めます。

太陽が糸のように細くなると、もう金星が見え始めます。
西の空から世界を覆うような巨大な暗闇がやってきて、その闇に包まれると皆既日食のスタートです。
青空から暗闇へ。この転換はものすごく動的でドラマティックです。
まるで、神様の手品を見ているような気持ちになります。
神様が青空のカーテンを一気に開いて、本当の宇宙の姿をつかのま僕たちに見せてくれる…。
僕はほんとうにそういう感じがします。

タイで見た皆既日食の継続時間は1分40秒でしたが、今回は『21世紀最長』の6分39秒です。
今世紀最大の皆既日食を、地球上でもっとも条件の良い場所で、最高の天気のもとで見られるのです。
僕は全身全霊をこめて、これを体験しようとしました。

時間がたくさんあるので、僕は星をできるだけ探しました。
金星と水星はすぐに見つかりました。シリウスやオリオン座もすぐ分かりました。
そして、水平線の少し上にカノープスという1等星も見つけられました。
カノープスは僕が一番好きな星なので、日食の空のの中に見つけられたのはとても良い思い出です。

6分39秒は『あっという間に』終わりました。

太陽が再び姿を現す『ダイヤモンドリング』の瞬間には、
その美しさに誰もが歓声を上げました。

タイヤモンドリングの瞬間は、僕は写真を撮らずに
自分の目で見ようと決めていたので、
写真はありません。

どんどん太陽が太くなっていきます。
この写真はカメラの前に日食グラスをかぶせて
減光して撮りました。
 
部分日食の状態のときに麦わら帽子をかざすと、
面白い現象が観察できます。

麦わら帽子の小さな隙間を通った光が、
みんな欠けた太陽の形になるのです。

麦わら帽子の影の中の光をよく見ると、
一つ一つがぜんぶ
三日月みたいな形になっているでしょう!
これは、光源である、
欠けた太陽の形がそのまま床に映っているのです。

木漏れ日などでも同じ現象が起こります。
小さな穴が開いたものなら何でも
こういう現象が起こるのですが、
やはり麦わら帽子がいちばん派手にたくさんできます。

同じ仕組みで、
画用紙に針などで文字の形に穴を開けておけば、
画用紙の影の中に欠けた太陽がたくさん映って、
文字が浮かび上がります。

日食観測にゆく人たちは、
けっこうみんなこれを作って記念写真を撮ります。

日付や自分の名前を入れると良い記念になるので、
部分日食を見る時はぜひあなたもやってみてください
(画用紙に穴を開ける作業は
前もってやっておきましょう)。

皆既日食が見られた直後のビールは
最高に美味しかったです。

とっておきのバドワイザー。

日食を見ることができたら飲もうと思い、
乗船する前にコンビニで買って、
客室の冷蔵庫で冷やしておきました〜。

この日の夕焼けは感動的でした。

太平洋の海原に日が落ちてゆきます。
こうして2009年7月22日は終わりました。

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