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ミマス図書館(ミマスのオススメ全20冊)

「人間の土地」
サン=テグチュペリ著 新潮文庫
「星の王子さま」の作者として有名なサン=テグジュペリは飛行機の操縦士で、
ヨーロッパ、アフリカ、南米などを飛んでおり、当時は一回一回の飛行が生命を かけた大冒険でした。

彼は第二次世界対戦中の1944年に地中海上空で敵国の戦闘機に攻撃され、非業の死を遂げます。
彼の小説には、空から、つまり非常に高い視点から見た人間観がちりばめられ、
私はラジオなどで彼を紹介するときは、「ガガーリンより何十年も前に宇宙から地球を見た人」とたとえています。

とくに『人間の土地』という小説は、彼の実体験をもとにした集大成ともいえる作品で、
人間の真の幸福とは何か、真の勇気とは、友情とは、など
何度読んでも新鮮な感動を与えてくれる、私の人生の教科書であります。

「夜と霧」 「それでも人生にイエスと言う」
V.E.フランクル著 春秋社
フランクルという人は精神科医でしたが、ユダヤ人であったため、
ナチスドイツによってアウシュビッツ収容所に入れられました。
歴史上悪名高い大量虐殺の中で、幸運にも彼は数少ない生存者の一人となります。

ナチスの収容所の惨状を記した書物はたくさんありますが、
フランクルが世界的に名高いのは
その惨状の中での人間観察、洞察力、そして何より絶望の底でも希望を失わなかったこと、
というよりも希望を自ら作りだし、それを支えに生き抜いたことです。
人間とはこれ以上ない絶望の淵でも希望を見つけて生きることができるのです。

『夜と霧』は世界的なベストセラーですが、『それでも人生にイエスという』はとても気軽に読めて、
かつそのエッセンスに触れられます。

「エチカ」
スピノザ著 岩波文庫
現在、プラネタリウムでの星座解説や、天文の書物、講演会などでキメの言葉として多用されるのが
「私達の身体も星のカケラでできている、私達人間も星なのだ」という言葉です。

これは、人間の身体を形成する元素は、かつて星の中心部での核融合反応や超新星爆発などで作られ、
宇宙空間にばらまかれたものであるという科学的事実から来ています。

このテの話はかなり聴く人を感動させますし、私もそのような歌を作り、コンサートで話したりしています。
これにある程度共感できる人ならば、17世紀オランダの哲学者スピノザの哲学はかなり共感を覚えると思います。

「一元論(すべての起源はひとつ)」「決定論(偶然などありえない)」
「汎神論(宇宙のあらゆるものに神が宿り、全ての存在に意味がある)」といった思想は私は好きです。

『エチカ』という書名は、本来の書名「幾何学的秩序に従って論証された倫理学」の略であり、
非常に難解な哲学書であることをお断りしておきます。

「老子」
講談社学術文庫
老子が生きたのは紀元前6世紀とも紀元前4世紀以後とも、またそんな人物は実在しないとも言われます。

流行やら常識やらの表面的なことに惑わされず、宇宙のいつの時代にもどこの場所でも変わらず存在する本質
(老子はこれを「道」と呼ぶ)に想いを馳せることができるなら、迷いなく満たされた人生を送ることができると説きます。

水のように形を変え(柔軟であれ)、低いところに落ち着き(謙虚であれ)、そうすれば水のように万物の役に立つことができる。
加工されない枝木のような、素朴な心を常に抱けば、宇宙の中で生を与えられたことの本当の意味が見える。のだそうです。
と、僕は解釈しました。

「万葉集」
講談社学術文庫
万葉集は現存する日本最古のソングブックで、4500もの歌が載っています。
これらは5世紀から8世紀のあいだ約350年間に作られたものです。
現代に生きる私達からみても、恋愛の切なさ、大自然への憧憬、人生の葛藤など、非常に共感を呼びます。

人間とは千何百年たとうとも、その本質は少しも変わることがないことを教えてくれます。
たったひとつの言葉で、複雑な心境や深い想い、
360度の大自然のパノラマなどを見事に表現してしまう芸術にふれると、言葉というものの神秘に驚嘆せざるをえません。
みなさん言葉を大切にしましょう。

「ソフィーの世界」 「カードミステリー」
ヨースタイン・ゴルデル著 NHK出版
作者のゴルデル氏は、現在では作家活動に専念していますが、ノルウエイの高校で哲学を教える教師でした。

1995年に出版された『ソフィーの世界』は「世界一やさしい哲学の教科書」として世界的なベストセラーとなりました。
ファンタジックな物語という形をとりながら、夢中で読み進めて行くうちに、
2000年以上の西洋哲学の概要が頭に入ってしまうという魔法のような名著です。
特筆すべきは、「なぜ人生に哲学が必要なのか?」をやさしく説いていることです。
哲学など自分の生活とは無縁だと思う人にこそぜひ読んでいただきたいです。

また同氏の『カードミステリー』も不思議な島を舞台に繰り広げられる物語で、
「哲学」のエッセンスが平易なことばで折り込まれています。

「ツアラトウストラはこう語った」
ニーチェ著 岩波文庫など
近代ドイツの哲学者、ニーチェは例え話ばかりで話を進めてしまいます(笑)
その例え話について行ける人はいいが、ついて行けないと
最初から最後まで何を言ってるのか分からぬということになってしまうのであります。

でも、世の中の「常識」というものに何となく違和感を感じる、という人はきっと『ツアラトウストラ』の言葉の意味が理解でき、
深い共感を覚え、勇気づけられるのではないか、と思います。
ということは私は世間の常識に違和感を感じているということですか(笑)。

「人生の短さについて」
セネカ著 岩波文庫
セネカという人は今から2000年ほど昔の、ローマ帝国の哲学者です。

この本は、短い貴重な人生を有意義に過ごすための知恵の書です。(ちょっと言葉にトゲがあるが)

彼はたぶん、同時代のローマの人々に対してこの言葉を書いたのでしょう。
しかし、2000年後の日本に生きる私達にもこの本の全ての言葉が怖いくらい当てはまります。

この本で最も好きなのは、「歴史上の尊敬する人物と、君は友達にもなれるし語らうこともできる。
君が困っているときには必ず助けてくれる。」という不思議な言葉です。
その秘密は、「書物というタイムマシーンによって」なのです。そう考えると「文字」という発明はすごいですね。

「火の鳥」 「ブッダ」 「ブラックジャック」
手塚治虫著 秋田文庫
昔は「マンガなどクダラナイ」と言う大人がけっこういたものです。
そのテの人を見ると、ああこのひとは優れたマンガに巡り会わずにこれまで生きてきたのだな、なんて思ったものです。
それはそうと、手塚治虫というと「鉄腕アトム」とか「ジャングル大帝」とかが取り上げられますが、
私にとってはこれが3部作であります。

15才のときに初めて『火の鳥・未来編』を読みました。「環境問題」などという単語がまだマイナーだった頃です。
時が過ぎるほどに、読み返して氏の先見の明の素晴しさを改めて実感いたします。

「平家物語」
岩波文庫他
13世紀初めに完成したといわれる平家物語は、誰が作ったのかも分からず、
琵琶法師と呼ばれる人々により「口伝えで」語り継がれたという日本史上きわめてミステリアスな文学作品であります。

武士として初めて日本の頂点をきわめた平清盛一族が、
源氏の驚異的な戦術に連戦連敗を重ね、滅亡してゆくいきさつが描かれた長編物語です。

源氏と平家を単純に善玉悪玉に設定するのではなく、勝者にも敗者にもそれぞれの事情と宿命があり、
逆らえない時代の流れがあり、それぞれのキャラクターが一人の人間として果敢にそれに立ち向かい、
散っていった姿の集合です。
私は何度読んでも同じところで泣けてしまうんですけど(笑)。

「気のいい火山弾」
宮沢賢治著
「銀河鉄道の夜」など名作の多い宮沢賢治ですが、「気のいい火山弾」という超マイナー作品は私のお気に入りです。
3分で読み終えてしまうような超短編です。

「火山弾」とは、火山噴火のさいに噴出される溶岩のカケラのことで、
主人公の火山弾はそのヘンテコな形のために森の木々や、自分に生えているコケからさえも馬鹿にされます。

毎日イジメられてもニコニコしていましたが、ある日、大学の調査団が火山弾を見つけ、
「こんな立派な標本はみたことがない!」と、 彼を宝物のようにていねいに包み研究室へ持ち帰ろうとします。
いままで馬鹿にしていた木や花に対して、去り際に火山弾が言います。
「私がこれから行くところは、この森のように楽しいところではありません。
でも私たちはみんな、自分にできることをしなければなりません。」

「若き詩人への手紙」
リルケ著 新潮文庫
もしあなたが趣味であれ仕事であれ、多かれ少なかれ創作活動(詩作でも音楽でも絵画でも陶芸でも)を行っているのなら、
リルケのこの本は一生あなたのそばにいて、いつも勇気づけてくれることでしょう。

この本の内容はタイトルの通り、リルケに対し助言を求めてきた詩人志望の一青年に対する答えです。

青年は自作の詩をリルケに送り「この詩は良いか悪いか」を問います。
しかしリルケはそんな視点をはるかに超越したところで、詩について、芸術について親切に説いてゆきます。
リルケは批評家のように青年の詩を添削したりはしません。
ただ芸術に対する真摯な想いを、愛情あふれた言葉で訴えます。

「塩狩峠」
三浦綾子著 新潮文庫
塩狩峠とは、北海道の真ん中、旭川の少し北にあります。
私はこの小説に感銘を受け、実際にこの地を訪れました。そこで生まれて初めてダイヤモンドダストを見ました。

そんなことはどうでもよくて、この小説の主人公は多くの人々を救うために自分の生命を犠牲にします。

まあ三浦綾子さんの小説にはそういうテーマが少なくないのですが。
他人のために自分の生命を差し出すなどという驚くべき行為に至るまでの彼の心の動きを、
読者にごく自然に理解させてしまうのがこの小説の、というより三浦綾子氏のすごいトコロ。

「星界の報告」
ガリレオ・ガリレイ著 岩波文庫
天文ファンの多くが、初めて望遠鏡で月や土星を見たときの感動を今も生き生きと語ります。
そんな星好きの人にぜひ読んでいただきたいのが、ガリレオ・ガリレイが1610年に著したこの本です。

人類史上、はじめて望遠鏡で宇宙を見たガリレオの観測レポートといった感じで、
文庫で70ページほどの大変みじかい文章です。

彼は自作の小さな望遠鏡で、月面にも山や谷があること、天の川が星の集まりであること、
木星の衛星などを次々と発見してゆきます。
科学的な価値は言うまでもありませんが、初めて望遠鏡をのぞいたガリレオの人間的な感動、
驚き、戸惑い、冷静な考察なども魅力です。

「天体の回転について」
コペルニクス著 岩波文庫
コペルニクスはポーランドの天文学者で、1543年、亡くなる直前にこの本を出版しました。

何を隠そう、『地動説』というとんでもないアイディアを表明した、人類史上きわめてエポックメイキングな本です。

当時は「地球が宇宙の中心ではない」などと表明することがよほど恐ろしかったとみえて、
本編に入る前にいろんなイイワケを並べております。

ところであなたは、なぜ地球が宇宙の中心ではなく太陽の周囲を回っていると言えるのか説明できるだろうか?
「学校でそう習ったから」としか言えない私達は、果たして昔の人々は無知だったなどと言えるのだろうか。

「相模湾上陸作戦」
大西比呂志・栗田尚弥・小風秀雅著 有隣新書
私は神奈川県茅ヶ崎市の出身在住ですが、茅ヶ崎市民21万すべての人にこの本を読んで欲しいと思っています。

第二次世界大戦の最中、戦争を終わらせるためにアメリカ軍はある作戦を準備していました。
1946年の春、茅ヶ崎海岸に大軍が上陸し、相模川に沿って北上し、最終的に首都東京を陥落させる「予定」でした。

茅ヶ崎は「沖縄」になるはずでした。
ところが1945年夏、この作戦の実行を待たず、戦争は終わってしまいます。
「広島」と「長崎」が茅ヶ崎の身代わりになったと考えることもできます。

もしも原爆というものがなければ、私はたぶん生まれなかったとかもと思いまして、
私は戦後50年目の1995年に広島へ行って参りました。