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歌を作ろう!
これは、1994年8月31日に神奈川県茅ヶ崎市で行われ、
ミマスが講師を務めた『一日音楽チャレンジセミナー・午前の部・オリジナルソングをつくろう』のテキストブックとして
ミマスが執筆した原稿に若干改訂を加えたものです。

1.歌はみんなのもの 6.作詞のコツ 1
2.実に簡単な作曲の仕方 7.作詞のコツ 2
3.和音のつけ方 8.作詞のコツ 3
4.作詞もやってしまおう 9.あなただけの世界を作る
5.詞のカタチ

歌はみんなのもの
何かを自分で作ってみたい、何かを表現してみたいという気持ちは、きっと多くの人が持っています。
表現のやり方にはいろいろありますが、ここでは、「自分の歌を作る」ということに挑戦してみましょう。

「表現」というと、たいへんむずかしくて高級なことのように聞こえてしまいますが、
たとえば、あなたが北海道の富良野かオーストラリアの大平原に旅行をして、
その景色に感激したとします。
さて帰ってきて友達に、その風景のすばらしさ、自分の感動を伝えたいと思うんですが、
どうしたらいいでしょう、とこういうことなんです。

ひとつには、「言葉で説明する」ということが考えられます。
それから、「絵を描いて見せる」というのもできますし、
「撮ってきた写真を見せる」でもいいですね。
「音楽をつくって聴かせる」というのも、そういったことの一つであるとこういうわけです。

絵を描いたり、写真を撮ったり、文章を作ったりすることは、
うまい下手を別にすれば、誰にでもできます。
歌を作ることも、うまい下手を別にすれば、とりあえず誰にでもできると思います。

ところがよくこんな声を耳にします。
『私は楽譜が読めないし、楽器も弾けないし、
語彙も少ないので歌を作るなんて、ああ、できるはずがないわ。』とこうです。

私の友人に、O崎K明という人がいますが、彼は楽譜も読めず、
楽器も弾けないのに作詞作曲をし、テープレコーダーに声を吹き込んでためているわけです。
そういう人はいっぱいいます。
私も16才で作曲をはじめたときは、楽譜も読めず、楽器も弾けなかったです。

技術なんてものは必要に迫られれば自然と覚えてゆくものです。
それに、自分の作った歌を他人に歌ってもらったり、
演奏してもらったりする場合は楽譜をかかなきゃなりませんが、
そうでなければ楽譜をかく必要なんてありません。覚えていればいいんです。

楽譜やピアノやギターができるずっと前から、
人間は歌っていたわけですから、楽譜や演奏技術が音楽の本質であるはずがありません。
まあそういった堅い話はぬきにして、むずかしく考えずにやってみましょう。
 よろしくおつきあいください。
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実に簡単な作曲の仕方
ふつう、リズムとメロディーと和音があると、曲になります。
歌を作るときは、一番大切なのはメロディーです。
曲を作ると言いますが、メロディーを作ることだと考えると、ちょっとできそうな気がしてくるでしょう。
というのも、メロディーを作るということは、
多くの人が、無意識のうちに、日常的にやっていることのように思えるからです。

たとえば、小学生が、友達をからかったり冷やかしたりするとき、
オリジナル曲にのせてやっていることがよくあります。
それから、気分よく自転車に乗ったり、
カップラーメンが3分経つのを今か今かと待ちわびているときなどは、
今まで聴いたこともないメロディーを口ずさんでいる自分に気付いたりします。

あんまり構えないでやりましょう。
別にハイレベルなことをやろうって訳じゃありません。
さきほども言いましたが、絵を描いたり、写真を撮ったりするのと同じです。
気に入らないのは捨てちゃえばいいし、何回でもやりなおしがききます。

あと、既成の曲を聴きながら、
僕だったらこの部分は「ミレドー」じゃなくて「ミソドー」にしたほうがきれいだと思うんだがなあ、
なんて時もあるでしょう。それは作曲の第一歩です。
そんなふうにして、なんか短いメロディーをだしてみましょう。
短いメロディーでも何度もくりかえせばすぐ3分くらいの立派な曲になっちゃうんですから。

さてメロディーが出てきたら、鍵盤でなんとか音を見つけながら弾いてみましょう。
最初のうちは、なるべく鍵盤の黒いところを使わずに、
白いところだけでやると、楽かもしれません。
こうして、音階が分かったら、楽譜のかける人は、忘れないように書いておきましょう。
楽譜のわかんないひとは、
「ドーソレーミー」というように文字で書いておくという手もありますが、
ちょっとこれだと再現できない可能性もあるので、
テープレコーダーに録音しとけばバッチリです。
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和音のつけ方
こんどは、そのメロディーに和音をつけるということをやってみましょう。
和 音というのは「コード」ともいい、
小学校で習った、ドミソとかソシレとか、いくつかの音をいっぺんに鳴らしたもののことです。

右手でメロディーを弾きながら、ときどき左手でコードを押さえるだけで、
今までどことなく情けなかったメロディーが急に立派な音楽に聞こえてくるから、
長生きはするもんですなあ。

というわけで、あなたの作ったメロディーにコードをつけるために、
次の6個のコード(和音)を覚えましょう。
おそらくはじめて作曲する人は、和音なんて何百通りもあるだろうから覚えてるうちに人生終っちまうよ、
なんて思っているかもしれませんが、何と驚いたことに、
ハ長調(鍵盤の白いところだけで弾ける)の曲ならば、この6個のコードで、十分たりるんです。

それでは何十何百とあるその他のコードはなんのためにあるのかというと、
6個のコードでは物足んない人が凝るためにつかっている」とこういうわけです。

どこの世界でもマニアックというのは敬遠されますから、ふつうにやりましょう。しごく普通に。
だいたい昔から名曲として歌いつがれている優れた曲ほど、
バカみたいにシンプルなコードでできているものです。(いやこれ本当なのよ)

ではその6個のコードを見てみましょう。

C(シー) ドミソ
Dm(ディーマイナー) レファラ
Em(イーマイナー) ミソシ
F(エフ) ファラド
G(ジー) ソシレ
Am(エーマイナー) ラドミ

さあさあ、あなたのメロディーに、コードをつけてみましょう。
だいたい、1小節(4拍分/ただし3拍子の曲だったら3拍分ですが)に
1つのコードをつけるくらいがちょうどいいです。

「こういう場合は、このコードをつける」というような決まりはありませんので、自由にやってください。
ああでもない、こうでもない、といろいろ試しているうちに、
きれいにきまってくる組み合わせが見つかるはずです。

また逆に、コードを適当に、順番に弾いてみると、
何だかそれだけでもう、曲のように聞こえてきますね。
さきにコード進行を決めておいて、
それに合うようにメロディーをつけていくというやり方で作曲している人もたくさんいます。


−もっと本格的に作曲をしたい人のために−
私の紹介したやり方は、何種類もあるうちのほんの一つです。
もっとあなたに適したやりかたがあると思います。(ここまできて何と無責任な)

ということで、もうちょっと作曲についてよく知りたいなと思う方は、
今すぐ本屋さんへ行って下さい。
「作曲のしかた」という類の本は、けっこうたくさん出版されているものです。
しかも、音楽の知識なんか全然ない人向けの、
大変分かりやすく書かれている本が多いんです。
他にも、「やさしいピアノの弾き方」「誰にでも弾けるギターの本」
「コードがたくさんのっている本」という感じの本はいっぱいあります。

普通の本屋さんの、音楽コーナーにもありますが、
一番いいのは、大きな楽器屋さんの書籍コーナーだとおもいます。
本を書いた人によって、意見が違うこともあるので、いろいろ買ってみるとよいです。


−コードの転回について−
さきほど、「C」というコードは「ドミソ」のことだよ、とご紹介しましたが、
実は他にも「C」というコードがあるんです。
それは「ミソド」と「ソドミ」です。
つまり「ド」と「ミ」と「ソ」の音が鳴っていれば「C」の和音に聞こえますので、
必ずしも「ド」が一番下じゃなくてもいいのです。
こういう変形を「転回」といいます。
弾きやすいように、また前のコードとのつながりがなめらかになるように、
コードを転回して弾いてもOKです。
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作詞もやってしまおう
曲ができたら、詞も考えてみましょう。
歌というのは、曲が先にできる場合、詞が先にできる場合、
両方とも一緒にできる場合などいろいろです。

さてさて作詞といっても一体何をどう書いたらいいのか、悩むところではありますね。
これもやはり、かたく考えずに、適当にやりましょう。
とりあえず何か 言葉を並べてみて、気に入ったものができたら使って、
気に入らなかったら捨てちゃってまた考えましょう。

真っ白な画用紙と色鉛筆をわたされたら、あなたは何を描くでしょう。
また、 カメラをわたされて、「好きなもの撮っていいよ」と言われたら、
あなたは何に レンズを向けるでしょう。そのときの気持ちと、おんなじです。

もし歌を作れるなら、こんなものをつくりたい、と思ったことはありませんか。え、ある。
そうですか、ではそれでいきましょう。

好きな人に気持ちを届ける歌、
旅行で見た忘れたくない風景をとっておくための歌、
12万5千円も入った財布を落としてしまって落胆している友達を元気づけ る歌、
世界平和を訴える歌、なんでもありです。

例)
スパゲティの美味しさに感激して作った歌 『イタリア人に生まれればよかった』
雪道の車の運転の危険性を訴える歌 『雪が降ったらジャフはたいへん』
思いがけない幸運が重なった喜びを表現する歌 『蟻の穴にチョコチップつきメロンパン』
日常の何気ない疑問を歌った歌 『フルハウスの主役って誰?〜それはたぶんミシェル〜』

など、いろいろ考えてみよう!
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詞のカタチ
詞は、どんなふうに書いてもいいんですが、一応の形があるんですね。
例えば、レコード会社に売り込んで一発大もうけしようとか、
コンテストで入賞して 旅行券をゲットしようとか、
大勢の人にほめてもらえるような歌を作りたい、というような野望のあるひとは、
いわゆる「いい詞」を書かなければなりません。

「いい詞」を書くには、それなりにいろんな約束事やテクニックが必要になりますが、
そうでなければ、形式にはさほどこだわることはないと思います。
しか し、基本的なことをいくつか説明させていただきます。

−詞(曲)の構成−
歌には、1番、2番、3番というのがありますね。
また1番の中だけを見ても、まず出だしのメロディーがあって、
つぎに少し感じの違うメロディーが続いて、
いよいよ盛り上がって来るサビ(聞かせどころ)のメロディーがくるというように、
ちゃんと起承転結があるのが普通です。
ですから、そのような起承転結を考えながら、詞を作るようにしましょう。

−字脚(じあし)−
1番と2番のある歌を作るというようなとき、
同じメロディーには、同じ長さの言葉(違ってもいいけどそんなに違わない)をつけないと、
うまく歌えなくなってしまいます。この、言葉の長さ、音の数のことを「字脚」といいます。

たとえば1番の出だしが「ぼくは ゆうひを みにいった」ですと字脚は(3、4、5)ですから、
2番では「くもも いつかは きえてゆく」なんてしますと、
これは都合がいいねとこういうわけです。

−言葉の積み上げ方−
字脚は、1番と2番で大きく違わなければ、
一つのフレーズの文字数が3でも4でも5でも、
偶数でも奇数でも素数でも虚数でも(虚数はないか)いいのです。

しかし、言葉のブロックを積み上げてゆくとき、ぜひ「4」という数字を大切にしてください。
なぜかというと、「音楽」とは4進法の世界だからです。
説明すると長くなりますが、よくミュージシャンが、
『イントロは16小節だ。そのあと4拍ブレイクがあってこのコード進行を8回繰り返し。
そしてサビのあとギターのソロが32小節入るんだ』
なんて言っているのを聞いたことがありませんか?(ないか。)

とにかく、いま出てきた数字は全部4の倍数で、
なんとなく4という数字が音楽の世界を支配しているので、
一行が4つの言葉でできていたり、1つのブロックが4行だったりすると、
曲が自然につきやすいということを、なんとなく覚えておいてください。
でもこれにあんまりこだわりすぎる必要もないです。
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作詞のコツ 1
作詞をはじめてまもない頃は、詞というより作文のようなものができてしまい ます。
作文調のものを詞らしくするには
「言わなくても伝わる言葉をどんどん削 る」ということに尽きます。
例を挙げてみてみましょう。

 『金星』(まるで作文)
遠い山のシルエットが見える 絹のような雲が赤く染まっている
僕ははなやかな大通りを通り抜けて 街の外れに来るよ
西風が音を立てながら 土の匂いを運んでいる
いつもと変わらない風景が こんなに悲しく見える

赤く染まってゆく空の中で ひとりだけ強く光っている
それはゆらめかないで なにもいわないで 聞こえるのは風の音だけ

『金星』(詞らしくなる)
遠い山のシルエット 赤く染まる絹雲
はなやかな通りを抜けて 街外れに来る
音を立てる西風が 運ぶ土の匂い
いつもと変わらぬ風景が こんな悲しくなる

赤くなる空の中で ひとりだけ強く光る
ゆらめかず なにもいわず 風の音だけがする

どんな言葉が削れるのでしょうか。

1.文を名詞句にする(体言止め)
「星明りがきらめいている」→「きらめく星明り」
「雲がながれる」→「ながれる雲」
「月の光が降りそそいでいる」→「降りそそぐ月の光」
「◯◯が××する」→「××する◯◯」

2.助詞を削る
「街の外れ」→「街外れ」
「私は部屋の中でおびえてた」→「私 部屋の中 おびえてた」

3.主語や目的語を削る
「僕は君が大好きだ」→「大好きだ」
「あなたは遠くへいっちゃうの?→「遠くへいっちゃうの?」

もちろん、ただ闇雲に削ればいいということではなく、臨機応変にやってね。
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作詞のコツ 2 −気長にやる−
「詞を作りたいけどとうしても作れないの!」と嘆いている人の話をよくよく 聞いておりますと、
たいていは、いきなり完成品を作ろうとしているような気が いたします。

たしかに世の中の音楽家は「じゃ、次は新曲を聴いてくれ。
タイトルは『愛の嵐』」 なんてサラッとかっこよく披露したりするものだから、
サラッと作ったのかななんて 思わせてしまうけれど、
普通の人間ならいくら苦労して産みの苦しみを味わったと しても、
「いや海を見つめていたらメロディーと詞が思い浮かんでね」なんて言いつつ
スマートに披露したいのが人情というものだし、
テレビの3分間クッキングだって本当に3分でできてると思いますか?

いきなり完成品を作ろうなどとゆめゆめ思わないことです。
まず1行書いてみ るのです。
それに続く言葉を何十通りも考えてみて、ほとんどが消してしまうこ とになるのです。
その繰り返しの遥か彼方に一つの歌の完成があるということで す。
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作詞のコツ 3 −逆算作詞法−
それから、詞が書けないと嘆いている人は、
たいてい歌の出だしの1行目から 書こうとします。
しかし作詞に慣れた人は結論である最後のキメの言葉から書いてゆきます。
という傾向があるような気がするんですね。

これはどういう意味があるかというと、
結論から書くということは、目的地が 決まっているということです。
旅行と同じで、例えば茅ヶ崎から大阪へ行く場合、
家を何時に出発したら良いかは、逆算して決めますね。

新大阪駅に午後2時までに着くためには、
11時51分静岡発の「ひかり」に 乗らなければならない。
そのためには、10時51分小田原発の「こだま」に乗らな ければならない。
そのためには10時15分茅ヶ崎発の湘南電車に乗らなければ ならない。
だから9時45分に家を出発「しなければならない」のです。

歌の出だしの最初の言葉も、歌の結論という目的地にちゃんと到着するために、
その言葉から始まらなければならないという必然性があるのです。
じつは、 こういうふうに考えると、作詞も作曲もすごくやりやすくなるのです。

歌の最後で「私達はみんな星だ」と言うためには、
その前に「宇宙の長い歴史があらゆる生命の中に受け継がれている」ことを
説明しなければならないし、
その前に「星空を眺めているという状況設定」をしなければ不自然です。

作詞とは、思い浮かぶ言葉をテキトウに吐き出しているのではなくて、
実は 必要な役割を果たす言葉を見つけ出すことなのです。
出だしから書き始める なんて、
とりあえず最初にやってきたバスに行き先も確かめずに飛び乗ってしまうくらい
トンデモナイことなのであります。それじゃ駅に着くかどうかも分か らない。

などと言ってしまいましたが、
本当に思いつきで素晴しい詞を書いてしまう 「天才」も実在します。
つまり人によっていろいろです(また責任回避)。

−作詞をもっと追究したい人は−
これもまた急いで本屋さんへ行って下さい。
大きな楽器屋さんの書籍コーナーでもいいですが、
「初めて作詞をする人の本」のようなものが、何種類も出てい ます。
作詞のやり方がもっとていねいに書いてあるので、研究してみてくださ い。

それから、あなたが感動した歌があったら、その歌をよーく聴いて、歌ってみて、
どこの部分が、どのように感動的なのかをじっくり考えてみると、それはた いへん効果的なことです。
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あなただけの世界を作る
さて今まで、いろんなことを書いて参りましたが、
歌づくりには、正しいやり 方というやり方というのもあしませんし、
間違ったやり方というのもありませ ん。
みんなそれぞれのやりかたで歌を作っているようです。

ですが、一つだけ言えるのは、大切なのは技術よりも気持ちである、というこ とです。
どんなに料理のうまい人でも、材料がなければ何も作れないのと同じよ うに、
「この気持ちを伝えたい」という材料がなければ、歌はきっとできませ ん。
逆に、そのような強い気持ちがあれば、それを歌にするのか、
絵に描くの か、小説にするのかということは、たいした問題ではないのかもしれません。

自分の考えや気持ちを、形あるものにして、世に出すと、なんだか自分の存在が確かに思えてきます。
自分の姿がはっきり見えてくるような気がします。
何らかの形で自分を表現することは、やはりいいことだと思うんですが、いかがでしょうか。
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