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MONUMENT VALLEY
大平原に、ビルのような岩山(ビュート)が群れをなしてそびえるモニュメント・バレーは、
グランドキャニオンと並んで「遥かなる大西部」のシンボルです。
日本に富士山があるように、アメリカにはモニュメントバレーがあります。

しかしここは、西部の荒野のもっとも奥地にあり、ネバダ州のラスベガスからも、ユタ州のソルトレークシティからも、
コロラド州のデンバーからも、アリゾナ州のフェニックスからも、2日くらいかけてハイウエイを飛ばさないとたどり着けません。
これらの都市の、ちょうど真ん中あたりに位置しています。

ラスベガスからグランドキャニオンまでが車で5時間、グランドキャニオンからここまでさらに4時間かかります。

ビジターセンターに着くと、目の前に3つのビュート
がカッコよくそびえている風景と対面します。

モニュメントバレーの内部には未舗装の道路があって、一般の車も入れますが、
ナバホの人々がジープ・ツアーをやっているので、これに参加しました。
僕たちは5人だったので、料金をちょっと負けてもらいました。
2時間くらいかけて一般の車が入れない谷の奥まで入って、いろんなポイントを巡ります。

ジープの運転手&ガイドはリチャードさんという人で、
「僕はこの谷で育った。ここは僕の庭だ。
おばあさんの代までは、みんなあの谷間で電気も水道もない暮らしをしていたんだ。」と言っていました。

おととし来たときにもジープ・ツアーに参加しました。
その時は、ガイドさんの英語が全くといっていいほど聴き取れず、
ガイドさんとフィリピンから来ていたカップルが話しているのを指をくわえて見ていたのですが、
この2年間、がんばって英会話の勉強をしていたので、今回は半分以上は英語の説明が理解できました。

ジープ・ツアーでは古代の人々が描いた
壁画も見られました。

アーティスト・ポイントからの眺望。
果てしない平原に
いくつものビュートが群れをなしてそびえる風景は
ほんとうに信じがたいものです。

遠くにスリー・シスターズ(3人姉妹)という名の
3つの岩の塔のシルエットが見えます。

そのスカイラインが、「W.V.」という文字に見えます。
あれは、3つの言葉のイニシャルを表しており、

「Wonderful Valley(素晴らしい谷)」
「Wonderful View(スゴイ眺め)」
「Welcome Visitors(みなさんようこそ!)」
という意味なのだと、
ガイドのリチャードさんが言っていました。

ところで、僕はここで信じられない光景を目のあたりにしました。

この日はとても風が強く、車から一歩でも出れば飛ばされてしまいそうで、砂埃で遠くがかすんでいました。
何気なく谷の風景を眺めていると、岩影から、何やら得体の知れない大きな生き物が大群となって現われ、
ボヨンボヨンとジャンプしながら迫って来ました。

何事かと思ってよく見ると、それは動物ではなくて、草でした。
そういえば、西部の砂漠では、枯れた草が丸いボールのようになって風に吹かれて転がっているのを見たことがありました。
しかし、こんな巨大な草のボールが、何十という大群になって、恐ろしい迫力でいっせいに転がるのを見たのは初めてでした。

草のボールは、大きいものでは直径1mほどもあり、本当に生きているように走り回っていました。
そのうち風がもっと強くなり、彼らは空へ舞い上がり、空でたくさん踊っていました。
この光景はほんとうに目を疑うほど衝撃的で、この世にはなんて不思議なものがあるんだろうかと思いました。

僕が今回の旅行でいちばん衝撃を受けたのは、このシーンであるように思います。いやホントにすごかったです。

これが砂埃に踊る枯れ草のボールです。
みんないっせいに同じ方向に走ります。

がんばって1匹つかまえて写真を撮りました。

ガイドのリチャードさんは、僕がこの草のボールをたいへん気に入ったのを察して、
「あれは英語で『タンブル・ウイード』(転がる草)というんだ、
我々ナバホ族の言葉では、『アジー』というのだ!!」、と教えてくれました。

草のボールが転がる様子は、ちょうどテレビで見た、カンガルーの群れがジャンプしながら走り周る様子にそっくりです。
その姿はどう見ても、生きているものの姿でした。
僕には、カラカラに干からびてしまったこの草が、確かにまだ心と意思を持っているように見えました。

植物は根を張って、一生その場所を動かないですけれども、この草はきっと、旅をしているのです。
過酷な砂漠で生きぬいて、土に帰るまでの束の間に、風に乗って谷を旅して、
自分が生涯を送った場所を、最期に見て回るのです。
それは、人間が旅をする理由とおんなじです。

風が止んで晴れ上がると、
吹き溜まりのような場所に草のボールが
100個くらい溜まっていました。

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アメリカ旅行記2004