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アムトラックに乗ったよ
鉄道の旅は広いアメリカの雄大な景色を、じっくりと、優雅に味わうことができます。
飛行機より格段にスピードは遅くても、点と点の旅ではなく、地を這う線の旅。

ワインやコーヒーを飲みながら眺める車窓に、砂漠、草原、街並が流れてゆきます。
何度も乗るのは贅沢というものだけれど、一生に一度は乗ってもバチはあたらないなーなんて思いました。

アメリカにはアムトラックという鉄道会社があって、全米に長距離列車を走らせています。
僕達が今回乗ったのは、ロサンゼルスとシカゴを結ぶ「サウスウエスト・チーフ号」と、
シカゴとサンフランシスコを結ぶ「カリフォルニア・ゼファー号」の2つの列車です。

この2つの列車に乗っただけでも、カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、カンザス、アイオワ、ミズーリ、
イリノイ、ネブラスカ、コロラド、ユタ、ネバダ、という11の州を巡ることが出来ました。

ニューメキシコ州アルバカーキ駅に停車中の
サウスウエスト・チーフ号。
2階建てで、客室は2階です。
1階にはシャワールーム、トイレ、荷物置き場があります。
車椅子の人のための客室は1階です。

寝台車は素晴らしい待遇だよ
アムトラックには、「コーチ」という普通の座席の車両と、「スリーパー」という寝台車が連結されています。
値段は高くても、寝台車はいろいろと待遇が良くて、たいへん良い思いができます。
寝台車のメリットを挙げると、

・乗車している間の食事はすべて無料でつき、これがなかなか豪華でおいしい。
 食堂車はとてもきれいで、車窓を楽しみながらのご飯は雰囲気がいいです。

・車両ごとにドリンクのサーバーがあって、
 コーヒー、ソフトドリンク、ミネラルウオーターなどが好きなだけタダで飲める。

・寝台はすべて個室。
 内側からカギがかかり、カーテンを閉めれば完全にプライベート空間になる。
 昼間は座席で、夜になるとテーブルをたたんでベッドができる仕組み。

・シャワーを利用できる。

・寝台車1両につき一人「カー・アテンダント」という係員さんがいる。
 この人は車掌さんとは別で、乗客のもろもろの世話をする為に乗車している。
 ご飯になると、希望の時刻を聞きに来て食堂車の予約を取ってくれたり、朝起こしてくれたり。

・朝、最初に停まった町の新聞がすべての個室に届けられる。

・寝台個室は、部屋ごとに空調の温度が決められ、BGMも聴ける。
 部屋の明かりの他に読書灯があり、その列車の時刻表や停車する町のちょっとした説明パンフレットが置いてある。

これは食堂車のお昼ごはんです。
Sachikoはチキンポットパイ、ミネストローネ、
アイスティー、コールスローを食べています。
晩ご飯はステーキ等が出ます。

サウスウエスト・チーフ号(ロサンゼルス―シカゴ)

これはロサンゼルスからグランドキャニオンの玄関の町フラグスタフを通り、
ニューメキシコ州のアルバカーキ、カンザスシティなどをとおり、シカゴへ行く列車です。
走行距離は3630km。2泊3日の旅です。
僕達はフラグスタフで一度降りて、1週間後にまた残りを乗車しました。

ロサンゼルスは、僕が生まれて初めて見たアメリカでした。
自分が抱いていた「カリフォルニア」とか「L.A.」という言葉のイメージと、ぴったりでした。
本当に、背の高いヤシの木がそこらじゅうにありました。11月でも、夏かと思うほど暑いし。
僕達は夕方ロサンゼルスに着いて、空港からタクシーで宿まで行き、最初に歩いて行ったのは駅です。


この素敵な建物は、なんと駅舎です。
ロサンゼルスのユニオン駅です。
中の待合室もまた広くて、芸術的なインテリアが素敵です。

それは、予約していた列車の切符を、受け取るためでした。
切符の予約は、日本から国際電話をかけてしたのです。
なにしろ全部英語でやりましたので、自分達の希望通りの切符がとれているか、
一刻も早く確かめる必要があったのです。

窓口では手続きがいろいろと大変でしたが、幸い、希望通りに予約ができていました。
そこでお金を払って、切符をもらいました。
(列車の予約は、じつはインターネットで簡単にできます。
僕らがわざわざ電話でやったのは、英語の勉強の成果を試したかったからであります。)

翌日の昼間は美術館でヒマをつぶして、夕方駅へ行きました。いよいよ旅行が始まります。
しかし、列車の出発が遅れました。アムトラックはよく遅れると聞いていました。
ガイドブックには、「1時間くらい平気で遅れます。3時間くらい遅れることも、ザラです」なんて書いてあります。

しかし、以前シベリア鉄道に乗った僕としては、この点に関しては、シベリア鉄道のほうが、上です(笑)。
僕は中国でも、タイでも鉄道に乗りましたが、これについては、日本が異常なのだと、思います。
1分の狂いも無く列車が来るなんて、ものすごい偉業です。

が、しかし、遅れるのは構わないのですが、出発が遅れているのに、
電光掲示板に「ON TIME(定刻通り)」と表示したままにしておくのは、やめてほしいものだ、なんて思いました。
「もう出発しちゃったんじゃないか?!」と、ホントに焦りますって!

ロサンゼルスを出発するとすぐ夜になってしまいました。食堂車で晩ご飯をたべて、寝ました。
夜明けには降りる駅に着いてしまったので、ここまではそれほどの出来事はありませんでした。
しかし、時差ボケがまだ残っていて、僕は夜中の1時頃にもう目がさめてしまい、眠れませんでした。
それで、ずっと外の景色を見ていました。
月がアリゾナの荒野を照らしていました。この眺めは本当に神秘的でした。

アリゾナで一度降りて、1週間レンタカーで砂漠を周り、
グランドキャニオンで流星雨も見て、またフラグスタフから乗りました。
こんどはシカゴまで、長旅です。
早朝に乗って、その日の昼間はアリゾナの砂漠と、ニューメキシコの大草原を走りました。

アルバカーキという大きな町で、1時間も停車しました。
ホームに下りて、駅の外に出ると、乗客相手のお土産やさんが賑わっていました。
Sachikoは買い物が大好きなので、ギリギリまでお店を見ていました。僕はここで5ドルの笛を買いました。

ニューメキシコの、一面の大草原の夕暮れはすごかったです。
両側は地平線までひたすら金色の草の海で、家一軒、道路一本ありません。
ナウシカのエンディングのシーンみたいでした。

次の日はミシシッピ川を渡りました。こんな上流でも、大変な川幅です。
もうこのへんは、シカゴまで延々と平らな大地が続きます。
牧場が続いて、馬や牛がたくさんいます。北海道の風景と似ていると思いました。


カリフォルニア・ゼファー号(シカゴ―サンフランシスコ)
この列車は、全米でナンバー1の人気列車だそうです。3920kmを2泊3日で走ります。
ミシシッピ川を渡り、プレイリーの大平原を走りぬけ、険しいロッキー山脈越え、
ネバダの砂漠を通って、またシエラネバダという山脈を越え、太平洋に辿りつきます。

僕達は11月26日に始発駅のシカゴからこの列車に乗りました。
シカゴは雪がかなり強く降っていて、駅まで歩いてゆくのが大変でした。
列車に乗り込み、寝台個室に入ったときは、ホッとしました。

シカゴを午後2時15分に出発しました。しばらく雪の牧場地帯を走ります。
ミシシッピ川を渡る頃にはもう夜になっていました。

翌朝、僕は夜明けの頃にはもう起きていました。コロラド州の一面の草原でした。
ちょうど金星(明けの明星)が黎明の空に輝いていて、
その光はまるで世界中の朝露を集めて空に飾ったようだと思いました(どこかで聞いたような)。

朝8時過ぎ、デンバーという大きな町に着きました。
もうここからは雪に覆われたロッキー山脈が見えます。
デンバーでは、ほとんどの乗客が降りてしまい、列車は閑散としてしまいました。

ガイドブックには、この列車は大変な人気で、
とくにデンバーから先のロッキー越えの部分はチケットがなかなか取れない、と書いてあったのですが、
11月では事情が違ったです。

ロッキー山脈越えの車窓です。
デンバーを出発するとすぐこういう風景になります。

これがラウンジ・カーという展望車です。
大きな窓の向こうに雪景色が広がります。
デンバーを出発すると、もうさっそく急な上り坂です。ゆっくりと急カーブを登ってゆきます。
周りは荒野ですので、車窓から、登ってきたレールが遠くデンバーの町まで続いているのが見えます。
そして、山の中に入ると、トンネルと、ロッキーの岩山の素晴らしい眺めがくりかえします。
こうした眺めは、日中、ずっと続きます。

この列車に乗っているときは、半分以上の時間を、僕達はラウンジ・カーという展望車で過ごしました。
窓が大きく、ずっと上のほうまで見えます。頭の真上に迫ってくる巨大な岩壁もバッチリ見えます。
ソファーみたいな椅子がたくさんあって、その椅子は完全に窓のほうに向くことも出来ます。

ユタ州の都・ソルトレイクシティにも停車するのですが、真夜中で、僕は記憶にありません。

翌朝は、ネバダ州の砂漠で夜明けを迎えました。ここの夜明けも感動的でした。
このあたりは、「グレートベイスン(大盆地)」と呼ばれるところで、
ロッキー、シエラネバダという2つの4000m級の大山脈にはさまれた盆地です。
でも甲府盆地と違うのは、広すぎて周りにそんな山一つ見えないということです。

そうこうしているうちにスパークス、リノと続けて停車し、
シエラネバダの山を越えるとようやくカリフォルニア州に入ります。

この列車は、厳密に言うと、サンフランシスコには着きません。
サンフランシスコ湾の対岸のオークランドという町の、エメリビルという小さな駅が終着駅です。
長い旅ををえて、ここに着く頃はちょうど3日目の夕陽が沈むところでした。
最後、しばらくのあいだ海沿いを走ります。

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アメリカ旅行記