この人は、僕たちが今回の旅行で一番最初に親しく話をした人です。
ロサンゼルスの駅で初めて寝台列車に乗り込んだとき、
僕たちの席であるはずの寝台の部屋に、すでに若い金髪の女性が座っていて、
両方とも自分の席だと主張するので、これはオーバーブッキングかと不安になりました。
僕の方は生まれて初めてアメリカへ来たばかりで、英語も良く分からないので、
きっとこちらが間違っているのかなと思っていたら、
彼女は「私、鉄道に乗るのは初めてで良く分からないの、ごめんなさい。」と言って、車掌さんを呼び出すボタンを押しました。
Sachikoも車掌さんを呼びに階段を下りてゆきました(列車は2階建てで、ほとんどの部屋は2階なのです)。
結局、彼女の方がチケットを読み違えていて、実は隣の部屋でした。
そのあとすぐ晩ごはんになりました。
寝台列車の乗客には食事が全部つくのですが、食堂車のテーブルには限りがあるので、基本的に相席になります。
最初のディナーで相席になったのは、さっきの彼女でした。
この人はサマンサさんという、23歳の人です。
ロサンゼルスから、実家のあるアリゾナのウインスローという街へ帰るために乗ったそうです。
仕事は、ハリウッドで映画制作の仕事をしているそうです。
世界的な映画スターにも大勢会ったことがあると言っていました。
Sachikoは映画が大好きなので、話がとても弾んでいました。
彼女は日本の映画にもとても興味を持っていて、とくにクロサワ映画は素晴らしいと絶賛していました。
クロサワ映画の中でも「ラッシュマン」が最高の作品だというので、
僕は「ラッシュマン(=突撃する人)」なんて言う映画があるんだー、なんて一瞬思いましたが、
ぜんぜん思い当たらないので、何度も聞きなおして、最後にはスペルを言ってもらったら、
何だったと思います?!?!「RASHOMON」つまり「羅生門」でした。
彼女は、「あなた達は、どんな映画が好きなの」と聴くので、
Sachikoはいろいろな作品を挙げて話が盛り上がっていましたが、
僕は「アルマゲドン」、「インディペンデンス・デイ」、「ディープ・インパクト」などというと、
彼女がニヤニヤしはじめたので、「僕は天文学が好きなんです」というと、
「あ、それなら私の町の近くに隕石が落ちたでっかい穴があるよ」と言いました。
しかしいま思うと、「インディペンス・デイ」は全然「天文学」じゃないです。
それに同じ宇宙モノでも「コンタクト」と言っておけばもうちょっと知的な人間と思われたかも知れません(笑)。
ちなみに僕は、彼女とボトルワインを1本分けて飲みました。
最初、おごってくれようとしたので、「いえいえ、僕も払います。ワリカンにしましょう。」と言って半分払いました。
スマップの香取くんの英会話ブックで「ワリカンにする」という表現を勉強していたので、さっそく役に立ちました。 |