この北アリゾナの小さな町には、
これぬきでは天文学の歴史を語ることができないというほど重要な天文台があります。
なんと、「冥王星」という惑星を1930年に発見したのであります。これは大変なことです。
冥王星を発見したトンボーさんという人は当時、ここに勤める若き助手でした。
素晴らしいことに、トンボーさんが冥王星を発見した望遠鏡とそのドームが今も現存していて、見学できます。
星好きとしては、こんなものを目の当たりにできるなんて、夢のような気分です。
ローウエル天文台は、郊外というよりは街なかと言っていいくらい、駅の近くにありました。
マーズ・ヒル(火星の丘)と名づけられた丘の上にあります。
そもそもこの天文台は、パーシバル・ローウエル先生という天文学者が、火星を観測するため、
最高の条件を探し求めてフラグスタフの街にたどりつき、建設した天文台なのです。
ローウエル先生が残した火星のスケッチには、「運河」と呼ばれる幾何学模様が描かれています。
彼は、火星人の存在を信じました。
火星には運河が網の目のように建設されており、その交点には都市がある。。。。
現在では、すべて否定されています。
望遠鏡で見ても、探査機が火星へ行っても、彼がスケッチに残したようなもようは、何も見えません。
彼は幻を見たのでしょうか。それは永遠の謎です。
しかし、展示されている肉筆のスケッチと対面したとき、僕自身や、ここを訪れる多くの人々の誰もが心に抱く、
未知への憧れ、情熱がとてもリアルに伝わってきて感涙いたします。
火星人がいようといまいと、それは小さな問題です。
本当に価値あるものは、彼が一人ぼっちで望遠鏡を覗き込み、見たもの、信じたもの、
生涯を捧げて描き続けたもの、変な言い方ですが、僕はそれこそが科学の本質ではないかと思います。
後になって答えを知った人々が、あの人は正しかった、
あの人は間違っていたなどと採点するように評価するのは、とてもつまらない態度だと思います。 |