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アリゾナの砂漠
グランドキャニオンの東側には「ペインティド・デザート」という砂漠が広がっていて、
滞在していたグランドキャニオンからここを通ってペイジという街へ日帰りドライブにでかけました。
長い影が伸びる砂漠の夕暮れ。

ドライブ

グランドキャニオンからペイジへの道程は230kmくらいですが、ここの風景はひっじょうに素晴らしかったです。
一言でいうと、見えるのは赤い砂漠と、地平線と、そこへ真っ直ぐに向かう一本の道だけ。
たまに街が現われては、また同じ風景にもどります。

僕は、地平線というものにとても憧れます。それはとても象徴的です。
年甲斐もなく言いますけれど、それは未来の象徴なのです。
地平線はたとえそこまでたどり着いても、何もないところです。そこからまた地平線が見えるだけです。

でもいつも地平線を追って、少しずつでも歩いていれば、新しい世界を見つけることができます。
保守的な人々は、あっちには何も見えないではないか、
あんなところまで行って何になるというのだ、ここにいろ、と、言います。

それは、自分の場所から見渡せる範囲を、世界だと思っている人々です。
一度でも地平線まで歩いていったことのある人は、そこで何かを見つけます。
それは、世界は広いという、単純な実感です。そうして、旅人は孤独になるのです。(何の話だ)


道の途中にところどころ
「シーニック・ビュー(良い眺め)」という標識があり、
車を停められるようになっています。
ここから右のほうを見ると、

こんな風景が広がっていました。

アンテロープ・キャニオン

ペイジの町のすぐ近くにアンテロープ・キャニオンという渓谷があります。
渓谷といっても、水は全然流れていなくて、谷底に当たる部分を観光客が歩くのです。
しかしひとたび雨が降るとここは濁流であふれ、その濁流が岩を削り、
このアンテロープ・キャニオンが作られたのであります。

アンテロープはナハボ族というネイティブ・アメリカンの人々の居留地の中にあるため、
個人では入ることが禁じられてます。
ペイジの町から観光ツアーに参加して行かないといけませんし、
料金とは別に、居留地に立ち入るためのチャージを払わないといけません。

この渓谷は幅が狭すぎて、もはや渓谷という感じがしません。洞窟のようです。
あまりに狭く、あまりに入り組んでいるため、空が見えないところがほとんどです。

しかし、ずっとずっと上にある天窓のような空から降り注ぐ日光が、細いビームとなって入り込んで、
赤い砂岩の岩壁をほのかに照らす様子はものすごく幻想的です。
ツアーガイドのジェシーさんが、谷底の砂をすくって投げ上げると、
舞い上がったチリのせいで日光のビームが幾筋も現われました。

そのときのツアーの参加者は僕達だけだったので、ここから写真を撮れ、とか、
あの岩が人の顔に見えるとか、いろいろ教えてくれました。


この岩の割れ目がアンテロープ・キャニオンの入口です。
中もずっと、このくらいの幅です。
ここの渓谷を作るのは赤い砂岩です。
幻想的な世界を作り出しているのはこの色と、地層の繊細なシマシマです。

アンテロープのニックネームは、「コークスクリュー・キャニオン(コルク抜きの谷)」だそうです。
ワインのコルク抜きを連想させる、繊細な斜めのシマシマです。

僕は大学で地層の勉強をしたので、これは「クロスラミナ」という構造だと、思いました。
大きな川の河口の水底で砂が堆積するときにできる、斜めのシマシマの構造です。
こんな大規模なものは、僕は初めて見ました。

パウエル湖とペイジの町

アリゾナ州とユタ州の境にレイク・パウエルという湖があります。これはダム建設によって誕生した人造湖です。
ダムのところにペイジという町があります。ダムの建設とともに成長した、新しい町だそうです。
小さな町ですが、観光業でたいへんにぎわってます。

近くにはアンテロープのほか、レインボー・ブリッジという、世界最大の岩のアーチ(高さ88m!)があります。
レインボー・ブリッジには陸路では行けず、
船で半日がかりで行かないといけないので、今回は行けませんでしたが。いつか見てみたいです。

ダム湖といっても相模湖や丹沢湖とは比べものにならないくらい広大な湖です。
なにせコロラド川をせき止めたんですから。

ちなみに、ここを中心に描く約200kmほどの円を「グランドサークル」と呼び、
アメリカ国内のもっともメジャーな観光エリアなんだそうです。
グランドキャニオンを含め、大西部の有名な見所の大半がこの小さな(?)円の中に収まります。


ホースシュー・ベンド

ここは本当に、本当に素晴らしい眺めでした。
ガイドブックにも載っていないし、道路に看板も全く出ていないので、地
元の人に教えてもらわなければ絶対に立ち寄らなかったところです。

ホースシュー・ベンドとは、馬のヒヅメの形のように川が円く曲がっている所、という意味だと思います。
ガイドのジェシーさんが「グランドキャニオンに帰るなら、途中のハイウエイに距離の標識が1マイルごとにあるから、
545マイルのところで右に曲がりなさい。すんごい景色よ。」と言いました。

すると本当に、545マイルの標識のそばに、西へ向かって入る道があり、すぐショボい駐車場がありました。
そこから丘の上へと続くケモノ道みたいなのがあります。
その道を歩いてゆくわけですが、周りは全部砂漠で、何もなく、雰囲気がとても良かったです。

よく映画で、セスナ機が砂漠に不時着して
主人公があてもなくフラフラ炎天下を歩いてゆくシーンがあったりするけど、あんな感じでした。

20分くらいかけて丘を一つ越えると、ほんとうにすごいところに着きました。
コロラド川が僕らの真下をぐるっと蛇行して、対岸が半島のようにこちらに突き出してきています。
足元も対岸も何百mもの垂直な岩壁です。

周囲は真っ赤な砂漠、ちょうど夕暮れで、一段と赤く染まっています。
全く無音の世界で、もはや完全に違う星の風景です。
僕が知っている地球とは、全く別の星だと感じました。


これがホースシュー・ベンドの景色です。
コロラド川は右奥からやってきて、
僕達の真下を通り、左奥へと丸く蛇行しています。
右下に小さく、船とその航跡が見えているのですが。。。
ものすごく巨大な風景です。
僕は今回の旅行でいちばん印象に残ったのは、ここです。
もちろんグランドキャニオンやモニュメントバレーはすごかったけれど、
それらについては、テレビや雑誌でいくらでも知識を得て、こちらもすごく期待して行くわけです。

100点満点を期待しても、150点の景色を見せてくれるのですが、
ここは何も期待していないところに同じ150点を見せてくれました。
それは強烈に心に焼きつきました。

砂漠の夕焼け
モニュメント・バレーから帰るときも、ペイジから帰るときも、
砂漠の一本道を走っているときに陽が傾き、陽が沈み、夕焼けになりました。
このときの光景は、それはそれは素晴らしいものでした。

赤い岩壁がさらに赤く染まり、砂漠の上に大きな丸い月が昇ります。
刻々と色を変えてゆく、雲ひとつ無い空と「なにもない」大地

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