BUNDA CLIFFS |
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バンダクリフは、今回の旅行でハメリンプールと並んで最も楽しみにしていた場所です。
この風景を見るために、僕は果てしないナラボー平原に足を踏み入れました。
オーストラリア大陸の形は、南側が大きくへこんで、グレート・オーストラリア湾になっていますが、
その湾の一番奥の海岸線には、こうした崖(クリフ)が延々と続くスゴイ風景が存在するのです。
果てしなく平らなナラボー平原が突然ここで終わり、垂直な崖で、真っ青な南洋と接しています。
この風景は、飛行機や鉄道やバスでは見に行くことができず、
西のパースから片道1700km、東のアデレードからでも片道1000kmの道程を運転しないといけないので
『バンダクリフ』、『ヘッド・オブ・バイト』などという地名はその素晴らしさの割にはあまり知られていない印象です。
でもこの風景はほんとうにスゴイです。 |
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この崖は何百kmもずっと続いています。
目も眩むような崖の恐ろしさと、
明るい海の色の美しさは
不思議な調和となって
信じがたい風景をつくっていました。 |
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僕はここで何時間も過ごして
いろんなことに思いを巡らせました。
日が傾いてくると
ほんとうに誰もいなくなるので
夕焼けまでギターを弾いて歌っていました。
これは気分が良かったですよ!
ほんとうに
この世の果てで一人ぼっちだという気持ちになりました。
僕はそういうのが好きなのです。 |
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ナラボーとユークラの200km間に
何ヶ所か展望台があります。
展望台といっても
横断道路からジャリ道が分かれていて
駐車スペースがあるだけです。
『落ちないように気を付けてください』
という小さな看板があるだけで、
柵などはありませんでした。 |
僕は子供の頃に、アルフレッド・ウェゲナーという気象学者の物語を本で読み、とても心を動かされました。
科学というのは、どんな作りものの物語よりも心を動かすことがあります。
ウェゲナーさんは今から100年近く昔のある日、
世界地図を眺めていて南米大陸とアフリカ大陸の形の凸凹がうまくかみ合って、
お互いを近づけるとジグゾーパズルのようにピタッと収まるような気がしたので、
『南米大陸とアフリカ大陸は昔ひとつだったのが、大西洋が広がって別々になったのだ』というアイディアを発表しました。
しかし当時の地質学者たちは
『大陸が動くなんて、そんなことがあるわけがない』といってほとんど相手にせず
そうこうしているうちに、ウェゲナーさんはグリーンランドを探検中に遭難して、氷の中で死んでしまったのです。
しかし、
彼の死から何十年もたって、海底の地形や地質が分かってくると、ウェゲナーさんの説が正しかったことが証明されたのです。
いまでは、大陸というのは、地球の歴史の中で何度も集まったりバラバラになったりというのを繰り返していて、
3億年くらい前には、『パンゲア』という、たった一つの巨大な大陸があったと言われています。
それがゆっくりと分裂して、いまのような世界地図ができあがったのです。
この話とバンダクリフが、どうして関係があるかというと、
じつはこの場所こそ、昔つながっていたオーストラリア大陸と南極大陸が引き裂かれた現場なのです!!!
ここで突然に終わっている大地の続きは、南極大陸なのです。
地球儀を見ると、大きく丸く凹んでいるグレートオーストラリア湾と丸くふくらんだ南極大陸の海岸線が、
パズルのようにうまく収まるようになんとなく見えます。
オーストラリアと南極大陸の間に横たわるこの青い海が、そのまま、何千万年という時間そのものです。
僕は青い水平線の彼方に、見えない南極大陸を心の中で見ていました。
この時間はほんとうに幸せでした。 |
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これは
Great Australian Bight
(グレートオーストラリア湾)の最奥ポイント
『Head Of Bight(ヘッド・オブ・バイト)』です。
青いグランドキャニオンとも言うべき
素晴らしい風景でした。 |
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あの水平線の向こうに
引き裂かれた南極大陸があります。 |
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あの白い砂丘のあるあたりが本当の湾の一番奥です。 |
ナラボー平原の『ナラボー(Nullarbor)』という名前は
『Null(無い)』+『Arbor(木)』で、木が無いという意味です。
このあたりでは、その名のとおりに、どこまでも草の海が続く素晴らしい風景が広がっています。 |
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これがナラボーの地平線です。
僕はこの道を1時間かけて歩いて、
どこまで行っても終わりがないので
また1時間歩いて戻ってきました。 |
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これは、僕が『陸上シーラカンス』と名づけた
ナゾ爬虫類です。
道を歩いていたら
ヘンテコな生物が目の前を横切っていたので
恐る恐る近づいて写真を撮りました。
本当は『ボップテイル』というそうです。
ナラボーにはたくさんいました。 |
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保護色でよく見えませんが、
これは、僕が『光速トカゲ』と名づけた生き物です。
すごく小さいのに、近づいてゆくと
秒速30万kmくらいの凄いスピードで
走り去って行くので
死ぬほどビックリしました。 |