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チリ抜けツアー VIAGE A CHILE

この山は、ボリビアとチリの国境にそびえるリカンカブール火山(標高5916m)です。

僕たちは、ボリビアから国境を越えてチリに抜ける片道ツアーに参加しました。
ボリビアのウユニからチリのサンペドロ・デ・アタカマまで、標高4000mから5000m近い荒野を、
2泊3日かけてひたすら四駆車で走り抜ける、いわゆる『チリ抜けツアー』です。

ここは、アンデス山脈の中でももっとも奥深い場所です。
薄い空気と、草一本生えない砂漠。
動物の気配すら感じられない乾いた静寂が支配する世界は、まさに僕たちの知らない地球の姿でした。
 

チリ抜けツアーの出発地はボリビアのウユニの町です。

3日間の行程のうち、
初日はひたすらウユニ塩湖の上を走り、
対岸に着いたところで最初の夜を迎えます。

2日目。
いよいよアンデス山脈のふところ深く登ってゆきます。
ツアーは単にチリへ移動するだけではなく、
その途中にある名所に寄ったり
景色の良い所でお昼ご飯を食べたりします。

これは、活火山のオリャグエ山(5870m)。
噴煙を上げています。

2日目にお昼ご飯を食べたエディオンダ湖。

車はずっと標高4000m以上の場所を走り抜けます。
周囲には、標高6000m級の
富士山のような円錐火山がたくさんそびえています。

『神の領域』と言っていいような、
信じられないくらい神々しい風景が
次々と目の前に展開します。

砂漠の中に、巨大なキノコのような
岩があります。

3日間お世話になったのは、この車です。
タイヤがパンクしてしまい、
運転手兼ガイドさんが修理してくれているところです。

悪路の連続なので、高山病との相乗効果で
車酔いに苦しむ人も多いそうです。

僕たちのようなボリビア→チリというルートは
結構ラクです。
参加者の多くは既にクスコやチチカカ湖を旅して、
体が高地に順応しているからです。
逆にチリ側の海岸沿いから
いきなり標高5000m近い所に来た人は、
吐き気や頭痛に悩まされることが比較的多いそうです。



これが、2泊3日のあいだ行動を共にしたメンバーです。
左側の2人が僕達、真ん中の2人はスロベニア人のカップル、右側の2人はアメリカ人の友人同士だそうです。

一緒になった彼らは皆すごく良い人たちで、3日間とても楽しく過ごすことができました。
とくにスロベニア人のカメラマン・ミハ君はユーモアに溢れ、いつもみんなを楽しい気分にさせてくれました。

ミハ君はいろんな人に自己紹介をするときに、
『僕はスロベニア人だ。スロベニアはイタリアとクロアチアの間にある国で、アドリア海に面しているんだ』と、
同じことをテープレコーダーのように繰り返していました。
世界で出会う人たちはあまりスロベニアという国のことを知らないので、いちいちそんな説明をしていたのだと思います。

僕は地理オタクなので国名くらいは知ってました。
彼が『スロベニアと言うのは、、、』と言った時に『知ってるよ。ヨーロッパで一番大きな洞窟がある国でしょ。
首都は確か、リュブリャナだ。』と言ったら、彼は『あっそう、知ってるかね!』と喜んでくれました。

そして、
『君は日本人か。日本ではサッカー選手のピクシーが有名だろう。ピクシーは日本では神様だろう、ハッハー!』と、
お国自慢を始めました。そんな感じでしたから、彼とはすぐに打ち解けました。

僕は、彼が自分の国のことをいろんな人に説明するのを眺めていましたが、
おそらく誰にとっても一番分かりやすい言い方、
つまり『近年までユーゴスラビアの一部だった国だ』という言い方は一度もしませんでした。
それを言えば多くの人が、すぐに『ああ、あの国ね』と分かったのではないかなあと、思います。

僕の深読みのしすぎかもしれませんが、きっと彼の心の中には、
自分の国は小さくても立派な独立国なのだ、という誇りが強くあって、
わざわざあんな回りくどい説明を続けていたのではないかなー、と思いました。
その姿は今でもすごく印象に残っています。
(でも彼がさんざん自慢していたピクシーはユーゴスラビア連邦の盟主セルビアの選手なので、
この推測は完全に外れているかも、しれません)

これは、2日目の晩に泊まった
コロラダ湖(ラグーナ・コロラダ)です。
スペイン語で『赤い湖』という意味です。

その名のとおり赤い湖で、フラミンゴがたくさんいました。

湖面の標高は4200m。
あの尖った山はパベジョン火山(5495m)。

ここの風景は本当に美しかったです。
『ここは神様の庭だ』という感じがしました。

コロラダ湖畔の宿泊施設、というよりも山小屋。

暖房も無いので
夜は死ぬほど寒くて眠れないほどでした。

山小屋の部屋。

夜は、けっこう早い時間に
灯りを消されてしまうので真っ暗です。それに寒い!

ミハ君が言った
『これはベッドか? 違うな、墓石だ』
というジョークに誰も笑いませんでした(笑)。

コロラダ湖畔にはビクーニャがいました。

この、コロラダ湖で見た満天の星空はほんとうに凄かったです!

僕は月刊『星ナビ』誌という天文雑誌に毎月コラムを書かせて頂いていて、
5ヶ月間の旅行中も旅先からEメールで原稿や写真を編集部に送って連載を続けていました。
その中で、このコロラダ湖で見た星空のことを書きました。

標高4200mの砂漠で、周囲には人工的な灯りが何もありませんから、天の川も南十字星もほんとうに凄かったです。
いちばん印象的だったのが、空気が薄いために星が全く瞬かず、天に光が張り付いているように見えたことです。
僕はこれまでそんな星空を見たことがありませんでした。
(星がキラキラ瞬いて見えるのは、上空で吹いている風など地球の大気の影響なのです)

ちょうど、星の中でいちばん明るい大犬座のシリウスという星が天頂で輝いていました。
日本から見るシリウスは冬の南の空でギラギラと目まぐるしく瞬いていますが、
コロラダ湖では頭の真上で、まったく瞬かずにピタッと止まったまま強烈な光を放っており、
『まるで白い木星のようだなあ』と思いました。
死ぬほど寒かったですが、一人で湖畔に立ってずっと星空を眺めた時間は素晴らしい思い出です。
 

3日目の朝。夜明けに出発です。

まず訪れたのが、
至る所からモウモウと蒸気を吹き上る温泉群。

あの看板には標高が書いてあります。
4870m。
地球にはスゴイ所があるんだなーと思いました。

入浴できるところがあります。

僕たちは足湯に浸かりました。
生き返りました〜。

チリ抜けツアーもいよいよ終わりに近づき、
ベルデ湖(ラグーナ・ベルデ)で
3日目のお昼を食べました。

これがボリビアとチリの国境です。
ここも標高4000m以上あります。

砂漠に看板が一つ。
『ここからチリ共和国』とだけ書いてあり、
シュールな光景だなあと思いました。

小屋のような事務所があり、
そこで出国の手続きをしました。

チリ入国の手続きは、ここから山を下った
サンペドロ・デ・アタカマの町で行ないます。

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