SOUTHERN SKY |
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この絵は、エアーズロックで見た天の川の印象を描いたものです。
6月のオーストラリアでは、南十字星は、宵の頃に南の空の高いところに直立して見えています。 天の川は、東から西へ、虹のアーチのように空にかかっています。
実は、今回オーストラリアへ行きたいと思った一番の動機は、『オーストラリアでは、天の川の光で地上に影ができる』 という、ちょっと信じがたいウワサの真偽を自分の目で確かめたい、というものでした。
天の川の光で影ができるなんて、初めて聞いたときは信じられない気持ちで、それは何かの見まちがいだろうと思ったのですが、
身近な星好きの人や、僕がコラムを連載させて頂いている天文雑誌の編集部の人など
いろいろな人が似たような証言をするので
もし本当にそんなことがあるのなら、この目で一度でいいから見てみたい、と思い焦がれるようになりました。
この『天の川の影』は、いつでも見られるというものではなく、
銀河系の中心(天の川が最も濃く明るく幅広い部分)が頭の真上に昇る頃に見られるのだ、ということでした。
そのタイミングは、たとえば6月の午前0時頃です。ですので僕たちは、旅行の日程を、6月の新月の時期に決めました。 |
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これは、
旅行前に購入した天体望遠鏡です。
旅行準備の買出しをしている途中に たまたまデパートの売り場で
破格のセールで売られているのを見つけて
衝動買いしてしまいました。
口径7cmですので、星雲星団や
二重星を見るには十分な性能です。 |
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望遠鏡を衝動買いした最大の理由は 収納したときのコンパクトさです!
鏡筒や三脚、接眼鏡、ファインダーなど
セット一式が全部 この小さな収納ケースに収まるように なっていて重量もすごく軽いので、
これなら海外に気軽に持っていける! と思ったからです。
半年前のオーストラリア旅行では ギターを持っていって バンダクリフの崖の上で歌ったりしました が、今回はギターをやめてコレにしました。 |
このコンパクト天体望遠鏡は、ほんとうに役に立ちまして、
僕たちのオーストラリア旅行を何倍も感動に満ちたものにしてくれました。
オメガ星団や、エータ・カリーナ星雲、南十字星のすぐ近くにある『宝石箱星団』など、いろいろ見ました。
南十字星の周辺には、肉眼でもたくさんの星団が青白い光芒となって見えるのですが、
そうした星団の一つ一つに望遠鏡を合わせてゆくと、視界の中には無数の星がキラキラ輝いて、
どれも宝石箱をのぞいているようでした。
星雲星団だけではなく、『二重星』というものも素晴らしかったです。
アルファ・ケンタウリという星は全天で3番目に明るい星ですが、肉眼では1つの星なのに、
望遠鏡で拡大すると2つの1等星がくっついているのが見えます。
この星を望遠鏡で2つに分解して見るというのは、『夢』だったのですが、
この小さな望遠鏡でもかろうじて2つの金色の輝星がくっついているのが見えまして、本当に感激しました。
白鳥座には、『アルビレオ』という星があって、日本からもよく見えるのですが、
これは望遠鏡で見るとオレンジ色と青色の2つの星に分かれて見えまして、その美しさから『天上の宝石』と呼ばれます。
南天には、『ほ座』という船の帆の星座があって、
そこには『南のアルビレオ』と呼ぶにふさわしい美しい二重星があると聞いていたので
『ほ座X(エックス)』という、その星も望遠鏡で見てみたところ、
オレンジ色と青色の星が視野の中に並んでいまして、非常に感激しました。 |
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これは、僕の『予習ノート』です。
知人に星にとても詳しい人がいるので
出発前に
ガストのドリンクバーで4時間くらい粘って、 南半球の星空の見どころについて
講義してもらいました。 |
さて、肝心の、天の川の光で地上に影ができるかどうか、ということですが、
僕たちは、アリススプリングスや、エアーズロックに泊まっていた時に、真夜中に車を走らせて星を見に行きました。 そこにはまったく人工的な灯りのない、完璧な満天の星空が広がっていて、 天の川もこれまで見たことがないくらい、形や輪郭がハッキリ見えました。
へばりつくようにして注意深く地面を見ると、確かに、地面に自分の体の影が映っていました。
しかしこれでは、この影が本当に天の川の光によってできてた影なのか、分かりませんでした。 夜というのは完璧に真っ暗闇ではなく、『夜天光』といって、夜空じたいが微かに光を持っているので、 その光で影ができているのかも知れない、とも思いました。
そこで僕は、この影が本当に天の川の光によるものなのかを確かめる方法はないものかと考えて、 シンプルな実験をしてみることを思いつきました。
エアーズロック2泊目の晩、まだ時間が早くて、銀河中心は頭の真上ではなく少し東に偏ったところにあったので 僕はたまたま持っていた2枚の画用紙を、下の図のように置いてみました。 |
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画用紙は、 『背景が白っぽいほうが
天の川の影は分かりやすいよ』 というアドバイスをされたので、 日本から持って行きました。
念のために2枚持っていったのですが このようにたいへん重宝しました。 |
大きな画用紙を一枚敷いて、そこに垂直にもう一枚の画用紙を立てると、 図のように、銀河系の中心とは反対側だけに濃い影ができて、もう片方にはほとんど影ができませんでした。
影はたいへん微かなものでしたが、何回試してみても、ハッキリ同じように見えました。
天文ファンの僕だけではなく、一般人(?)のサチコ嬢も、『何回やっても同じだ!影ができるのは片方だけだ!』 と言っていました。
僕は、この結果から、この影は銀河中心の光によってできたものであり、
『銀河系の中心(天の川が最も濃く明るく幅広い部分)の光で地上に影ができる』というウワサは本当なのだと思いましたし、
今でもそう思っています。
もちろん、淡い天の川そのものだけではなく、天の川の周辺に密集している明るい星たちの光が集まって全体として、
影を作るだけの光源となっているのだと思いますが、その星たちも天の川の一員ですから、 やはり、『天の川の光で影ができている』といって良いと思います。
僕たちは、確かに天の川の影を見たと信じていますが、自信のない感じもしています。
というのも、このことについては、少なくとも僕は、神秘的なウワサという形で、人づてにしか聞いたことがありませんし、 何かの本に科学的な見地から書かれているという話も、寡聞にして聞いたことがないのです。
天の川の光で自分の影ができるとしたら、こんなに素晴らしい光景は他にありません。
この広い銀河系の2000億個の星たちが、みんなで集まって一つの壮大な光を作り、
それが僕や、あなたを照らしているということなのです。 |